ポジションセンシング(位置検知)-傾斜センサによる相対位置検知-
ポジションセンシングの必要性
産業分野ではアーム先端の相対位置情報が大変重要となる装置や機械が多数あります。例えば油圧ショベル(ユンボ)では、トラクタ部分に対するバケットの位置や高さが必要不可欠な情報です。
バケットの相対位置は、ある軸からの傾斜情報をもとに計算されます。バケットの位置情報はバケットが水中にあるなど位置が目視で確認できない場合や、バケット位置が極めて正確に求められる場合などに非常に重要となります。つまりポジションセンシング(位置検知)によって掘削がより容易になり、作業効率が向上し、さらには配線や配管への接触事故の危険性も軽減されます。傾斜センサを用いれば駆動部を必要とせずに、ポジションセンシングを低コストで実現でき、信頼性も向上します。
もう一つ、傾斜センサの機能を遺憾なく発揮する機能は、山、建築物、樹木といった物体の高さを計測することです。この方法はレーザー距離計等の計測対象までの距離を測定する測定器と併用します。この計測手法は建設関係の業種や、ある一定エリアの樹木のボリュームを見積もる場合などに利用できます。
ポジションセンシング向けの製品
ポジションセンシングにはVTI傾斜センサの3つのシリーズが用いられます。
- SCA61Tシリーズ:1軸計測用
- SCA100Tシリーズ:2軸計測用
- SCA103Tシリーズ:高精度1軸計測用
センサ形状はいずれもプリント基板実装用のDIP(デュアルインラインパッケージ)タイプで、計測方向に対して平行に装着します。各シリーズにはそれぞれ2種類のセンサがあり、レンジによって選択戴くことができます。
測定原理
VTIの傾斜センサは地球の重力加速度を測定して傾きを測定します。すなわち傾斜センサで計測した重力加速度は傾斜角度の正弦(サイン sin)×1gに等しいので、逆算して角度を求めることができます。重力加速度が0gならば傾斜角は0度です。
精度について -主たる誤差要素-
傾斜測定における主たる誤差要素は以下の6項目です。
1.ゼロ点誤差
最も大きな誤差要素はゼロ点誤差です。使用可能温度域が-25~85℃の場合、ゼロ点誤差は±10mg(管理限界6σ)、すなわち温度依存特性は±0.1mg/℃になります。雰囲気温度の影響は校正や温度補償を行うことで軽減することが可能です。
2.センサ自体に内在する誤差
傾斜センサが計測する加速度は1g×sin(傾斜角度+センサ自体に内在する誤差)に比例します。センサ自体に内在する誤差は最大±2.9°(±50mgに相当)です。この誤差は角度を大きく増幅して利用する装置では特に重要となります。また加速度と傾斜角の関係が非線形であるため、測定角度によっては影響を留意する必要があります。
3.感度誤差
感度誤差は±1.5%(-20~+85℃)です。SCA61T-FAHH1Gの場合は最大±20mg、SCA61T-FA1H1Gの場合は最大±40mgとなります。
4.他軸感度
他軸感度(4%)は計測面に垂直な面の加速度に反応する感度を指します。他軸感度は2項で述べたセンサ自体の誤差にも影響されます。
5.振動誤差
VTIの傾斜センサはオーバーダンピング構造により高周波振動の影響を可能な限り低減しています(高周波側のカットオフ周波数 f-3dB = 2~10Hz)。ただし非常に増幅された振動(>5g)のような極端なケースではゼロ点シフトが発生します。
6.レシオメトリックエラー(供給電圧の変動に起因する誤差)
傾斜センサを安定して使用するためには、供給電圧を5V一定、もしくは4.75~5.25Vの範囲にする必要があります。供給電圧が変動すると、最大で2%の誤差が生じます。SCA61T-FA1H1Gの場合、5Vの供給電圧が5±0.25Vに変動すると、基準電位Vdd/2に対して最大5mgの誤差が生じます。

