傾斜計測

傾斜計測の必要性

地球の重力に対して確実に垂直あるいは水平であるかが重要である製品はたくさんあります。例えば、多くの国ではリフトやクレーンの傾斜測定が法的に義務付けられています。また、輸送機関では傾斜測定が極めて重要です。

例えば雪上車・砂上車などのオフロード車両では事故防止や安全性確保のため傾斜測定が必要ですし、振り子式鉄道車両では遠心加速度を補正するために傾斜を測定しています。つまり傾斜センサによって重力が床に垂直にかかるような車体姿勢の維持が可能となる訳です。

また平面レーザーのような光学装置でも水平あるいは垂直状態の測定が必要とされます。多くの場合、直交する2面に対する傾斜が測定されます。

傾斜計測向けの製品

傾斜計測にはVTI傾斜センサの3つのシリーズが用いられます。

  • SCA61Tシリーズ:1軸計測用
  •   
  • SCA100Tシリーズ:2軸計測用
  •   
  • SCA103Tシリーズ:高精度1軸計測用

センサ形状はいずれもプリント基板実装用のDIP(デュアルインラインパッケージ)タイプで、計測方向に対して平行に装着します。上記のシリーズはそれぞれ測定レンジが異なります。

センサ型式 レンジ カットオフ周波数
SCA61T-FAHH1G1軸±0.5g ±30°8Hz
SCA61T-FA1H1G1軸±1g ±90°8Hz
SCA100T-D012軸±0.5g ±30°18Hz
SCA100T-D012軸±1g ±90°18Hz
SCA103T-D041軸±0.26g ±15°18Hz
SCA103T-D051軸±0.5g ±30°18Hz

測定原理

VTIの傾斜センサは地球の重力加速度を測定して傾きを測定します。すなわち傾斜センサで計測した重力加速度は傾斜角度の正弦(サイン sin)×1gに等しいので、逆算して角度を求めることができます。重力加速度が0gならば傾斜角は0度です。

図 重力加速度と傾斜角度

精度について -主たる誤差要素-

傾斜測定における主たる誤差要素は以下の6項目です。

1.ゼロ点誤差

最も大きな誤差要素はゼロ点誤差です。使用可能温度域が-25~85℃の場合、ゼロ点誤差は±10mg(管理限界6σ)、すなわち温度依存特性は±0.1mg/℃になります。雰囲気温度の影響は校正や温度補償を行うことで軽減することが可能です。

2.センサ自体に内在する誤差

傾斜センサが計測する加速度は1g×sin(傾斜角度+センサ自体に内在する誤差)に比例します。センサ自体に内在する誤差は最大±2.9°(±50mgに相当)です。この誤差は角度を大きく増幅して利用する装置では特に重要となります。また加速度と傾斜角の関係が非線形であるため、測定角度によっては影響を留意する必要があります。

3.感度誤差

感度誤差は±1.5%(-20~+85℃)です。SCA61T-FAHH1Gの場合は最大±20mg、SCA61T-FA1H1Gの場合は最大±40mgとなります。

4.他軸感度

他軸感度(4%)は計測面に垂直な面の加速度に反応する感度を指します。他軸感度は2項で述べたセンサ自体の誤差にも影響されます。

5.振動誤差

VTIの傾斜センサはオーバーダンピング構造により高周波振動の影響を可能な限り低減しています(高周波側のカットオフ周波数 f-3dB = 2~10Hz)。ただし非常に増幅された振動(>5g)のような極端なケースではゼロ点シフトが発生します。

6.レシオメトリックエラー(供給電圧の変動に起因する誤差)

傾斜センサを安定して使用するためには、供給電圧を5V一定、もしくは4.75~5.25Vの範囲にする必要があります。供給電圧が変動すると、最大で2%の誤差が生じます。SCA61T-FA1H1Gの場合、5Vの供給電圧が5±0.25Vに変動すると、基準電位Vdd/2に対して最大5mgの誤差が生じます。

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